ケイデンス・速度の計算
ケイデンス(毎分回転数)・ギア比・走行速度の関係を計算します。求めたい値をモードで選択し、残り3つを入力すると算出されます。「速度」「必要ケイデンス」「必要スプロケット歯数」の3方向から計算できます。
入力
結果
ケイデンスの定義と役割
ケイデンスとは1分間あたりのペダル回転数(rpm)のことです。パワーとギア選択と並んで、ケイデンスはすべてのサイクリストが努力と速度をコントロールするための3つのレバーのひとつです。ギアを変えれば同じ速度をまったく異なるケイデンスで達成できますが、その選択には生理学的に明確な違いがあります。
この計算機はドライブトレインの恒等式を3方向に解きます。モードを選ぶと、残り3つの値は入力として残ります。
- 速度を求める — ケイデンス・ギア・タイヤ周長から走行速度を計算。
- ケイデンスを求める — 目標速度と現在のギアから、必要なペダル回転数を計算。
- スプロケットを求める — 目標速度と維持したいケイデンスから、必要なリアスプロケット歯数を計算。
計算の仕組み
基本となる恒等式
走行速度は、クランクの回転速度・ギア比(1クランク回転あたりの後輪回転数)・タイヤ周長の3つで決まります。
v=60ケイデンス×スプロケットチェーンリング×Cwここで は m/s 単位の速度、ケイデンスは rpm、 はタイヤ周長(m)です。この1本の式を変形すれば、4つの未知数(・ケイデンス・スプロケット・チェーンリング)のいずれも単独で解くことができます。
ギア比
G=TsTcチェーンリングの歯数()をスプロケットの歯数()で割った値。50Tチェーンリングと17Tスプロケットなら で、1ペダル回転で後輪が2.94回転します。
展開距離(ロールアウト)
ギア比にタイヤ周長を掛けると展開距離(1ペダル回転あたりの移動距離)が求められます。
d=G×Cw700c × 25mmタイヤ(周長2105mm)で50/17ギアを使うと、 m の展開距離になります。
3つのモード
同じ恒等式を3通りに変形しています。
モード0(速度を求める):v=60⋅Tsケイデンス⋅Tc⋅Cw モード1(ケイデンスを求める):ケイデンス=Tc⋅Cwv⋅60⋅Ts モード2(スプロケットを求める):Ts=60⋅vTc⋅ケイデンス⋅Cwモード2の結果は連続値です。実際のカセットの歯数は整数で、しかも所有しているコグは限られているため、最も近い歯数に丸め、速度かケイデンスのどちらかがわずかにずれることを前提に扱う必要があります。
ケイデンスと生理学
最適な範囲
Vercruyssen & Brisswalter(2010年)の研究では、トレーニングを積んだサイクリストにとって代謝効率が最も高いケイデンスは80〜100 rpm付近とされています。この範囲では、1回あたりのトルクが適度で局所的な筋肉疲労が起きにくく、心肺系と筋肉系のバランスが最適に保たれます。
初心者は60〜70 rpmに落ち着きがちです。低いケイデンスのほうが「力を入れている感覚」があるためですが、心肺機能の向上とともに自然とケイデンスは上がっていきます。
ケイデンスとパワー
パワー = トルク × 角速度。同じパワーを出しながらケイデンスを上げると、1回転あたりのトルクが下がり、遅筋繊維を温存して筋肉疲労を遅らせることができます。プロ選手がタイムトライアルで95〜105 rpmを維持するのは、瞬間的には低ケイデンスのほうが楽に感じても、持続的には心肺系の疲労耐性を活かしたほうが有利だからです。
高ケイデンスの注意点
110 rpmを超える非常に高いケイデンスにはトレードオフがあります。神経協調コストの上昇・心拍への過負荷・ペダリングフォームの乱れなどです。高ケイデンスで効率を保つにはテクニックが必要で、アンクリング(足首の無駄な動き)や腰の揺れが増幅するとエネルギーのロスが大きくなります。
実践的な活用シーン
1. 巡航ギアの確認(速度を求める)
よく使うケイデンス(例:90 rpm)・チェーンリング・スプロケットを入力して速度を確認します。その速度が普段の走行速度と一致していれば、ギア選択とケイデンスがうまく合っていると確認できます。
2. 登坂戦略(スプロケットを求める)
10%の急な登りで速度が12 km/h程度まで落ちる場合、クランクを止めないためには75 rpm程度で回したいとします。スプロケットを求めるモードに切り替え、目標速度 12 km/h、ケイデンス 75 rpm、インナーチェーンリング、タイヤ周長を入力すると、必要なスプロケット歯数が出ます。答えが28Tなのにカセットが25Tまでしかなければ、そのケイデンスではギアが不足していると分かるので、ゆっくり回すか、より強く踏むか、ワイドレシオのカセットに交換するかを検討します。
3. タイムトライアルのペーシング(ケイデンスを求める)
平坦なタイムトライアルで保ちたい速度(例:40 km/h)が決まっているとします。ケイデンスを求めるモードに切り替え、その速度・アウター+トップ寄りのギア・タイヤ周長を入力すると、その組み合わせで強いられるケイデンスが算出されます。105 rpmを超えるなら心肺系が先に潰れ、75 rpmを下回るなら膝に負担が集中します。快適な範囲に収まるギアを選択することが重要です。
4. ローラー台・トレーナーとの整合
屋内トレーナーは速度に応じた負荷曲線を持つものが多く、ケイデンスとギアから速度を算出すれば、屋外感覚に近い負荷設定が可能です。
タイヤ周長を正確に測るために
タイヤ周長の誤差はすべての速度・距離計算に影響します。最も正確な方法はロールアウト法(タイヤと地面に印をつけて1回転転がして計測)です。通常の空気圧で、実際にライダーが乗った状態に近い条件で測ることが重要です。10mmの誤差は速度の計算誤差約0.5%に相当し、サイクルコンピューターのキャリブレーションには注意が必要です。
注意事項
- ドライブトレインのロスは計算に含まれていません。 実際のドライブトレインではチェーン摩擦・たわみ・ベアリング抵抗で1〜4%のパワーが失われます。
- タイヤ周長は荷重と空気圧によって変化します。 重い荷物を積んだ自転車ではコンタクトパッチが広がり、実効周長がわずかに短くなります。
- GPS速度と計算速度の違い。 GPS速度はサンプリングレートとマルチパス誤差に影響され、ケイデンスセンサーから算出した速度は周長の精度に依存します。どちらも絶対的な真値ではありません。
- スプロケットを求めるモードの結果は連続値です。 実際のカセットは整数歯数しかなく、所有しているコグも限られています。最も近い歯数に丸め、わずかなずれが生じることを前提に扱う必要があります。
よくある質問 (FAQ)
サイクリングの最適なケイデンスはどのくらいですか?
Vercruyssen & Brisswalter(2010年)の研究では、トレーニングを積んだサイクリストにとって代謝効率が最も高いケイデンスは80〜100 rpm付近とされています。初心者は心肺機能より筋力に頼る傾向があるため、60〜70 rpmになりやすいです。プロ選手はタイムトライアルで95〜105 rpmを維持することが多く、長距離での持続性を心肺系に分散させる戦略が現代のプロ選手の標準となっています。
ギア比はどのように計算しますか?
ギア比=チェーンリング歯数÷スプロケット歯数。50Tのチェーンリングと17Tのスプロケットなら、50÷17≒2.94。つまり1ペダル回転でリアホイールが2.94回転します。ギア比にタイヤ周長をかけると1ペダル回転あたりの移動距離(展開距離・ロールアウトとも呼ばれます)が算出できます。
タイヤ周長を実測するにはどうすればよいですか?
最も正確な方法:タイヤを通常の走行空気圧に調整し、タイヤと地面それぞれに印をつけて自転車を前に1回転転がし、地面の2点間の距離を計測します。実際の荷重状態でのタイヤ形状を反映できます。タイヤサイズの表記と参照表を使う方法もあります。700c×25 mmは2105 mm、700c×28 mmは2136 mmが目安です。
ケイデンスを高くすれば出力(パワー)も上がりますか?
必ずしもそうではありません。出力=トルク×角速度です。同じ出力でケイデンスを上げると1ペダル回転あたりのトルクが下がり、局所的な筋肉疲労を抑えて持続しやすくなります。ただし、ケイデンスが110 rpmを超えると心肺への負担が増し、効率が逆転する場合もあります。多くの選手はタイムトライアルでは85〜100 rpmに最適化しています。
免責事項
速度の計算値は、スリップのない完全剛性ドライブトレインを前提としています。実際の走行速度はタイヤ変形・チェーンたわみ・路面状況によって異なります。タイヤ周長は空気圧とライダーの体重によって変化します。