除脂肪体重の計算
Boer・James・Hume のデータをもとに導かれた3つの計算式を用いて、体脂肪を除いた除脂肪体重(LBM)を推定します。薬物投与量の計算や体組成管理にご活用ください。
入力
結果
推定除脂肪体重は ...(3式の平均値)、推定体脂肪量は約 ... です。
除脂肪体重(LBM)とは
除脂肪体重(LBM: Lean Body Mass) とは、総体重から体脂肪を除いた部分の重さです。筋肉・骨・臓器・血液・皮膚・体水分などが含まれます。体重計が示す数字は筋肉・骨・水分・脂肪すべてを合算した値であるのに対し、除脂肪体重はそのうち脂肪以外の組織の量を表す指標です。
厳密には、除脂肪体重は骨髄や臓器に存在する「必須脂肪」をわずかに含む点で、脂肪を完全に除いた脂肪ゼロ体重(FFM: Fat-Free Mass)と区別されます。両者の差はごく小さく、臨床やフィットネスの現場ではほぼ同義として扱われます。
推定の仕組み
体脂肪を含まない組織の量を直接測るには、DEXA スキャンや水中体重測定などの専門機器が必要です。そこで日常的な推定には、身長・体重・性別という入手しやすい3つの値から除脂肪体重を予測する回帰式が用いられます。
回帰式は、多数の被験者で実測した除脂肪体重と身体計測値の関係を統計的に当てはめたものです。性別ごとに係数が異なるのは、平均的な筋肉量・骨量・体脂肪分布が男女で異なるためです。本ツールは Boer・James・Hume の3つの古典的な回帰式を用い、それぞれの推定値と3式の平均値を表示します。
計算式
3つの式はいずれも身長 (cm)、体重 (kg)、性別を入力に用います。
Boer (1984)
LBM男性=0.407×W+0.267×H−19.2 LBM女性=0.252×W+0.473×H−48.3James (1976)
LBM男性=1.1×W−128×(HW)2 LBM女性=1.07×W−148×(HW)2Hume (1966)
LBM男性=0.3281×W+0.3393×H−29.5336 LBM女性=0.2296×W+0.3213×H−18.4本ツールでは3式の平均値を「標準推定値」として表示し、総体重から平均除脂肪体重を引いた値を推定体脂肪量とします。
計算例
身長 175 cm・体重 70 kg の男性の場合、Boer 式は次のように計算されます。
LBM=0.407×70+0.267×175−19.2≈56.0 kgJames 式・Hume 式でも同様に計算し、3式の平均をとった値が標準推定値となります。3式の差は通常2〜4 kg 程度で、この幅が推定の不確実性を示しています。
3式の違い
| 式 | 特徴 |
|---|---|
| Boer (1984) | 大規模臨床データに基づき、麻酔・薬物動態分野で最もよく使われる |
| James (1976) | 肥満者での過大推定を補正。腎機能ベースの薬物調整に有用 |
| Hume (1966) | 最初期の回帰式。体水分量稀釈法から導出 |
一般的なフィットネス目的では3式の平均で十分です。医療用途では、対象患者や適応薬剤ごとに使用する式が異なる場合があります。
推定の限界
これらの式は集団データの回帰式であり、個人ごとの精度には限界があります。
- アスリートや筋肉量が非常に多い人: 式の係数は一般集団を基準にしているため、筋肉質な人では過小評価されることがあります。
- 高度肥満の人: James 式は肥満者への補正項を含みますが、BMI 40 を超える場合は予測精度が下がることが知られています。
- 高齢者: 加齢に伴うサルコペニア(筋肉量の減少)は、体重と身長だけでは捉えられません。
- 精密な測定が必要な場合: 臨床的に精度の高い体組成データが必要なときは、DEXA スキャン(二重エネルギー X 線吸収測定法)が推奨されます。
主な用途
薬物投与量の計算
麻酔薬・抗菌薬・抗がん剤など、一部の薬剤は総体重ではなく除脂肪体重を基準に投与量を決めることがあります。体脂肪は薬物の分布体積にほとんど寄与しないためです。肥満患者に総体重ベースで投与すると過剰投与になり得る一方、除脂肪体重ベースであれば筋肉量に応じた量を算出できます。
フィットネス管理
ダイエット中に筋肉量が増え体脂肪が減ると、体重の変化が相殺されて見えにくくなります。除脂肪体重を定期的に追跡することで、体重だけでは捉えにくい筋肉量の増減を把握できます。
基礎代謝率の推定
基礎代謝率(BMR)は、脂肪組織よりも筋肉・臓器といった代謝活性の高い組織と強く相関します。除脂肪体重が分かると、総体重のみを用いる場合よりも精度の高い基礎代謝率の推定が可能になります。基礎代謝計算 も参照してください。
タンパク質摂取量の目標設定
スポーツ栄養学では、タンパク質の必要量を「体重 1 kg あたり○g」ではなく「除脂肪体重 1 kg あたり○g」で設定する考え方があります。体脂肪率が高い場合、総体重基準では必要量を過大に見積もる可能性があるためです。
よくある質問 (FAQ)
除脂肪体重とは何ですか?
除脂肪体重(LBM: Lean Body Mass)とは、筋肉・骨・臓器・血液・皮膚・水分など、体脂肪を除いたすべての組織の重さです。脂肪ゼロ体重(FFM: Fat-Free Mass)と混同されることがありますが、LBM は厳密には骨髄や臓器に存在する「必須脂肪」を含みます。臨床・フィットネスの現場ではほぼ同義として使われることがほとんどです。
なぜ3つの式があるのですか?
それぞれ異なるデータセットと時代から導出されたためです。Boer (1984) は大規模な臨床集団を対象とした水中体重測定を用い、James (1976) は体重が重い人での過大推定を補正する2乗項を加えました。Hume (1966) は体水分量希釈法を用いています。通常、3式の差は2〜4 kg 程度で、この幅が推定の不確かさを示しています。
除脂肪体重と脂肪ゼロ体重の違いは何ですか?
脂肪ゼロ体重(FFM)は文字通り脂肪がゼロの状態の体重ですが、除脂肪体重(LBM)は中枢神経系や骨髄に蓄えられた必須脂肪を含みます。差は小さく、臨床・フィットネスの文脈ではほぼ同義として扱われます。
除脂肪体重はどのような場面で使われますか?
主な用途:(1)薬物投与量の計算 — 肥満患者への過剰投与・過少投与を防ぐため、LBM 1 kg あたりの投与量として設計された薬剤があります;(2)フィットネス管理 — 筋肉量増加と体脂肪減少を別々にモニタリングする;(3)基礎代謝率の推定 — BMR は総体重より LBM から予測する方が精度が高い;(4)栄養計画 — タンパク質目標量を LBM 1 kg あたりの g 数で設定することがある。
免責事項
これらの式は集団平均の推定値であり、極端に痩せている方・肥満の方・アスリート・高齢者では精度が下がる場合があります。精密な体組成測定にはDEXAスキャンのご利用をお勧めします。