残業代の計算(労働基準法 37 条)
入力
| 基礎時給の入力方法 | 時給を直接入力 |
|---|---|
| 月の所定労働時間 | 173 |
| 時間外労働(月 60 時間以内) | 20 |
| 時間外労働(月 60 時間超) | 0 |
| 深夜労働(時間外でも休日でもない) | 0 |
| 時間外+深夜(月 60 時間以内) | 0 |
| 法定休日労働 | 0 |
| 休日+深夜 | 0 |
| 時間外(月 60h 超)+深夜 | 0 |
| 法令適用期 | 改正後(2023 年 4 月〜・一律 1.50 倍) |
残業代の計算(労働基準法 37 条)
労基法 37 条の割増率(1.25 / 1.35 / 1.50 倍)で時間外・深夜・休日の残業代を区分別に計算します。給与明細の検算、固定残業代の検算、月 60 時間超 1.50 倍の 2023 年改正インパクト試算まで一つのツールで対応。
入力
基礎賃金
残業時間(1 ヶ月分)
法令適用期
結果
値を入力すると計算結果が表示されます。
詳細
法的根拠(労基法 37 条)
固定残業代制度の留意点
シナリオ
現在の入力を保存すると、複数シナリオを並列表示して比較できます。
残業代の決まり方
残業代は、基礎時給 × 残業した時間 × 割増率 で決まります。割増率は、時間外・深夜・休日のどれにあたるかで変わり、法律(労働基準法)で最低基準が決められています。本ツールが対応する 7 区分の割増率は次のとおりです。
| 区分 | 割増率 | 内訳 |
|---|---|---|
| 時間外(月 60h 以内) | 1.25 | 通常の残業 |
| 時間外(月 60h 超) | 1.50 | 月 60 時間を超えた分 |
| 深夜のみ(残業ではない深夜帯の勤務) | 1.25 | 深夜割増 25% |
| 時間外+深夜(月 60h 以内) | 1.50 | 残業 25% + 深夜 25% |
| 法定休日 | 1.35 | 休日労働 |
| 休日+深夜 | 1.60 | 休日 35% + 深夜 25% |
| 時間外(月 60h 超)+深夜 | 1.75 | 残業 50% + 深夜 25% |
これらは 最低基準 です。会社の就業規則や労使協定で、これを 上回る 割増率(1.30 倍・1.35 倍など)を定めることはできますが、下回ることはできません。
「法定休日」とは、法律で定められた週 1 日(または 4 週 4 日)の休日のことで、会社が独自に定めた休み(所定休日。たとえば会社カレンダーの土曜休み)とは別物です。所定休日に出勤した場合は、時間外労働として扱います。
計算式
残業代 = 基礎時給 × 残業時間 × 割増率
7 区分それぞれに同じ式を適用し、合計したものが月の残業代の総額です。
| 区分 | 式 |
|---|---|
| 時間外(月 60h 以内) | P₁ = w × h₁ × 1.25 |
| 時間外(月 60h 超) | P₂ = w × h₂ × 1.50 |
| 深夜のみ | P₃ = w × h₃ × 1.25 |
| 時間外+深夜(月 60h 以内) | P₄ = w × h₄ × 1.50 |
| 法定休日 | P₅ = w × h₅ × 1.35 |
| 休日+深夜 | P₆ = w × h₆ × 1.60 |
| 時間外(月 60h 超)+深夜 | P₇ = w × h₇ × 1.75(改正前 1.50) |
| 合計 | P = P₁ + P₂ + P₃ + P₄ + P₅ + P₆ + P₇ |
月 60 時間超 1.50 倍の歴史
月 60 時間を超える時間外労働の 1.50 倍割増は 2010 年 4 月 の労基法改正で導入されました。ただし当初は中小事業主に適用猶予が設けられ、約 13 年間は中小企業では従来通り 1.25 倍のままでした。
この 中小企業猶予が 2023 年 4 月 1 日に撤廃 され、企業規模にかかわらず月 60 時間を超える時間外には一律 1.50 倍が適用されるようになりました。
改正前後の差額の例
時給 1,500 円・月 60 時間超の時間外を 20 時間した場合:
- 改正後(1.50 倍): 1,500 × 20 × 1.50 = 45,000 円
- 改正前(1.25 倍): 1,500 × 20 × 1.25 = 37,500 円
- 差額: 7,500 円 / 月(年間で約 9 万円)
時給 2,500 円・月 60 時間超の時間外を 30 時間した場合:
- 改正後: 2,500 × 30 × 1.50 = 112,500 円
- 改正前: 2,500 × 30 × 1.25 = 93,750 円
- 差額: 18,750 円 / 月(年間で約 22.5 万円)
中小企業に勤務する長時間残業者ほど改正の影響が大きく、未払いの清算や 36 協定の見直しに繋がっています。本ツールでは「法令適用期」を切り替えて並列比較できます。
基礎時給の算定
月給制の場合、基礎時給は次の式で算出します:
基礎時給 = 月給(除外手当を除く) ÷ 月の所定労働時間
月の所定労働時間
就業規則で定められた月の所定労働時間。一般的な範囲は 160〜173 時間:
- 完全週休 2 日・1 日 8 時間: 年間 2,080 時間 ÷ 12 = 約 173 時間
- 法定上限: 40 時間 × 52 週 ÷ 12 ≒ 173.33 時間
これを超える所定労働時間は、労使協定(変形労働時間制など)がない限り認められません。
算定基礎から除外される手当(労基則 21 条)
基礎時給の算定にあたり、次の手当は 基本給に含めない:
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1 ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
これらは「個人の事情で支給される手当」とされ、残業代計算の基礎には入りません。逆に役職手当・職務手当・資格手当などは、原則として基礎時給に含めます。
計算例
例 1: 基本パターン
- 時給 1,500 円
- 時間外(月 60h 以内)20 時間
- 深夜帯勤務 0 時間、休日勤務 0 時間
→ 残業代 = 1,500 × 20 × 1.25 = 37,500 円
例 2: 月給制・複数区分の組み合わせ
- 月給 300,000 円・月の所定労働時間 173 時間 → 基礎時給 ≒ 1,734 円
- 時間外(月 60h 以内)20 時間
- 時間外(月 60h 超)5 時間(改正後 1.50 倍)
- 深夜のみ 3 時間
→
- P₁ = 1,734 × 20 × 1.25 = 43,353 円
- P₂ = 1,734 × 5 × 1.50 = 13,005 円
- P₃ = 1,734 × 3 × 1.25 = 6,503 円
- 合計 ≒ 62,861 円
例 3: 改正前後の比較
- 時給 2,000 円・月 60 時間超の時間外を 25 時間
→
- 改正後(1.50 倍): 2,000 × 25 × 1.50 = 75,000 円
- 改正前(1.25 倍): 2,000 × 25 × 1.25 = 62,500 円
- 差額: 12,500 円 / 月(年間で 15 万円)
固定残業代制度の留意点
「月 30 時間分の固定残業代込み」「みなし残業 45 時間相当を含む」といった給与体系は 固定残業代制度(みなし残業)と呼ばれます。給与計算が単純化される一方、制度上の論点が複数あります。
超過分の別途請求
固定残業代は「合意された残業時間までの残業代を前払いする」もので、実際の残業がその時間を超えた場合は超過分を別途支払う義務があります(最高裁: 国際自動車事件・平成29.2.28判決、日本ケミカル事件・平成30.7.19判決)。月 30 時間分の固定残業代でも、実残業が 50 時間であれば 20 時間分は別途請求できます。
深夜・休日割増の取り扱い
固定残業代は通常「時間外労働 1.25 倍の何時間分か」しか含まないことが多く、深夜割増(+0.25)・休日割増(+0.10)は別途支払う必要があります。深夜帯にも勤務している場合は、固定残業代と別に深夜手当が支給されているかが確認のポイントになります。
区分の明確性と合意の有効性
固定残業代として有効と認められるには、以下が 明確に区分 されている必要があります:
- 通常賃金と固定残業代の 金額の区分
- 何時間分の残業に対応するかの 時間数
- 超過分は別途支払うことの 明示
「基本給 30 万円(うち 5 万円は 30 時間分の固定残業代)」のように契約書・就業規則で明記されていない場合、固定残業代の合意自体が無効と判断され、結果として 基本給 30 万円全額をベースに別途残業代を計算 することになるケースがあります(最判: テックジャパン事件、医療法人社団康心会事件など)。
このツールでの検算チェック
給与明細上の固定残業代が法定下限を満たしているかは、次の手順で確認できます。
- このツールに 基礎時給 と みなし残業時間(契約上の時間数)を入力する
- 「時間外(月 60h 以内)」欄にみなし残業時間を入れて算出される金額を確認する
- 給与明細の固定残業代額がこの金額以上であれば法定下限は満たしている
例: 基礎時給 1,800 円・みなし残業 30 時間の固定残業代は、法定下限で 1,800 × 30 × 1.25 = 67,500 円。固定残業代がこれを下回る場合、契約自体に問題がある可能性があります。
参考リンク
よくある質問 (FAQ)
残業代が給与明細の金額と一致しません。なぜですか?
考えられる理由は主に 3 つです。①このツールは法定の最低割増率を使っていますが、会社の就業規則や労使協定で 1.25 倍を超える割増率(例: 1.30 倍)を定めている場合はその値が適用されます。②基礎時給の算定に含める手当の範囲が異なる場合があります(役職手当を含むかどうかなど)。③固定残業代制度を採用していると、支払い方法が異なります。給与明細・就業規則と照合してください。
月 60 時間超の 1.50 倍はいつから全企業に適用されますか?
2023 年(令和 5 年)4 月 1 日以降です。それ以前は中小企業に適用猶予があり、月 60 時間超でも 1.25 倍のままでした。2023 年 4 月の改正で猶予が撤廃され、企業規模に関わらず一律 1.50 倍が適用されています。このツールの「法令適用期」で改正前後を切り替えて比較できます。
深夜と時間外が重なった場合、割増率はどうなりますか?
時間外労働(1.25 倍)と深夜労働(0.25 倍上乗せ)が重なる時間帯は 1.50 倍になります(基本給 100% + 時間外 25% + 深夜 25%)。このツールでは「時間外+深夜(月 60h 以内)」の区分がこれに対応します。一方、深夜帯でも所定労働時間内(例: 22 時〜翌 5 時を含む夜勤シフトで、その時間が法定内)であれば時間外加算はなく、深夜割増 1.25 倍のみです。
固定残業代(みなし残業)が法定下限を満たしているか確認できますか?
このツールで検算できます。①モードを「時給を直接入力」にして、基礎時給(基本給 ÷ 所定労働時間)を入力。②「時間外(月 60h 以内)」にみなし残業時間を入力。③算出された金額が給与明細上の固定残業代以下であれば法定下限を満たしています。例: 基礎時給 1,800 円・みなし残業 30 時間 → 法定下限は 1,800 × 30 × 1.25 = 67,500 円。
法定休日と所定休日の違いは何ですか?
法定休日とは労基法 35 条が定める週 1 日(または 4 週 4 日)の休日で、割増率は 1.35 倍です。一方、会社が就業規則で独自に定めた休日(例: 土曜日を休みにする場合)は「所定休日」と呼ばれ、これに出勤した場合は法定休日労働ではなく時間外労働(1.25 倍)として扱います。
免責事項
本ツールは労働基準法 37 条に基づく 法定下限の割増賃金 を計算します。実際に適用される割増率は 36 協定や就業規則・労働協約で別途定められている場合があり、その場合は会社の規定が優先されます。基礎時給に算入する手当の範囲も会社により異なる場合があるため、最終的な金額は給与明細・就業規則・労使協定を確認してください。