信用創造の計算(貨幣乗数)
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| 預金準備率 | 10 % |
|---|---|
| 初期預金 | 1,000 ドル |
信用創造の計算(貨幣乗数)
部分準備銀行制度に基づき、準備率と初期預金から貨幣乗数・預金総額・新規貸出額・必要準備金を計算します。
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信用創造(貨幣乗数)とは
貨幣乗数とは、銀行システムが初期の準備(預金)を何倍の預金総額に拡大できるかを示す倍数であり、準備率の逆数(1 ÷ 準備率)に等しくなります。部分準備銀行制度のもとでは、最初に投入された預金が貸し出しの連鎖を通じて何倍もの預金として銀行システム全体に広がります。
その仕組みの土台にあるのが部分準備銀行制度です。銀行は受け入れた預金のうち「準備率」分だけを準備預金(中央銀行への預け金)として積み立て、残りを貸し出せます。貸し出されたお金は借り手が支払いに使い、別の銀行に預金として戻ってきます。その銀行も同じルールで一部を準備として残し、残りを貸し出す――この連鎖が信用創造であり、初期預金の何倍もの預金がシステム全体で生まれる仕組みです。
貨幣乗数の計算式
準備率を とすると、貨幣乗数 は次の式で求められます。
初期預金を とすると、銀行システム全体の預金総額 は次のようになります。
信用創造によって生まれた新規貸出総額 :
銀行システム全体で積み立てられる必要準備金 :
という等式は重要な恒等式です。信用創造のサイクルが完了すると、初期預金はすべて準備金として銀行システム内に積み立てられます。
計算例:500万円の預金、準備率14%
企業が500万円を銀行に預け入れ、準備率が14%だとします。
貨幣乗数:
預金総額: 万円
新規貸出総額: 万円
必要準備金: 万円(初期預金と一致)
準備率14%では、500万円の初期預金から約7倍の預金総額が創造されます。約3,071万円が「銀行が新たに生み出した信用」であり、初期の現金では存在しなかった金額です。
信用創造の連鎖(具体例)
準備率10%、初期預金100万円のケースでは、貸し出しの連鎖は次のように進みます。
| ラウンド | 新規預金 | 新規貸出 | 積み立て準備 |
|---|---|---|---|
| 1 | 100万円 | 90万円 | 10万円 |
| 2 | 90万円 | 81万円 | 9万円 |
| 3 | 81万円 | 72.9万円 | 8.1万円 |
| 4 | 72.9万円 | 65.6万円 | 7.3万円 |
| ⋮ | ⋮ | ⋮ | ⋮ |
| 合計 | 1,000万円 | 900万円 | 100万円 |
各ラウンドの金額は、1回ごとに準備分を差し引いた残りの割合だけ縮小していく等比数列です。その無限和は 万円に収束します。
実際の乗数が理論値を下回る理由
教科書の式 が前提とする「銀行はすべての超過準備を貸し出す」「現金はすべて銀行に預け戻される」という仮定は、現実には完全には成立しません。準備率が低い局面では理論上の乗数は極めて大きくなりますが、実際の広義マネーの伸びは理論値を大きく下回るのが一般的です。主な理由は次のとおりです。
超過準備の滞留: 大規模な国債買い入れ(量的緩和)によって市場に供給された資金の多くは、銀行の中央銀行当座預金(超過準備)として滞留し、貸し出しには回らないことがあります。例えば日本銀行は量的・質的緩和のもとで大量の資金を供給しましたが、超過準備が積み上がり、理論上の乗数効果は限定的でした。中央銀行が超過準備に付利すれば、銀行が貸し出すよりも資金を中央銀行に預ける誘因が強まります。
現金漏出: 現金の保有・決済の比率が高い経済では、預金として銀行に戻らず手元に残る現金が多く、信用創造の連鎖から外れる分だけ乗数が小さくなります。
貸出需要の低迷: 人口構成の変化や企業の内部留保の増加などを背景に、資金需要が構造的に低い局面では、銀行が貸し出そうとしても借り手がいなければ乗数は機能しません。
貨幣乗数とケインズ乗数の違い
ケインズ乗数計算ツール は、財政支出の増加がGDPをどれだけ拡大させるかを計算します。一方、貨幣乗数は、準備金の注入が預金総額(マネーサプライ)をどれだけ拡大させるかを計算します。どちらも等比数列の和として導かれ、各段階で連鎖から漏れる割合(ケインズ乗数では限界貯蓄性向、貨幣乗数では準備率)が小さいほど乗数が大きくなる点は共通です。ただし、対象とする市場(財市場と金融市場)と政策手段(財政政策と金融政策)は異なります。
よくある質問 (FAQ)
貨幣乗数(信用乗数)とは何ですか?
貨幣乗数(m = 1 ÷ 準備率)とは、銀行システムが1単位の準備から何倍の預金を生み出せるかを示す倍数です。準備率10%の場合、100万円の初期預金から最終的に1,000万円の預金が創造されます。A銀行が10万円を準備預金として積み、90万円を貸し出し→借り手がそれを別の銀行に預け→B銀行が9万円を積んで81万円を貸し出す……という連鎖が等比数列の和として収束します。100万円 × (1 ÷ 0.10) = 1,000万円が銀行システム全体の預金総額となります。
部分準備銀行制度はどのようにお金を創造しますか?
銀行は預かった預金の一部(超過準備)を貸し出すことで、元の預金を超えるお金を生み出します。A銀行が100万円の預金のうち90万円を貸し出すと、借り手がそれを使った先でB銀行に90万円の預金が発生します。B銀行はさらに81万円を貸し出し、C銀行に81万円の預金が生まれます。貸し出すたびに新しい預金が別の銀行に生じるため、銀行システム全体の預金残高は初期の現金投入額より大きくなります。これはお金の「印刷」ではなく、預金と貸出という相互の約束が連鎖することで信用(マネー)が生まれる仕組みです。
信用創造の計算式を教えてください
初期預金を D、準備率を r とすると:貨幣乗数 m = 1 ÷ r、預金総額 M = D × m、新規貸出総額 L = M − D = D × (m − 1)、必要準備金合計 R = M × r = D。Rが常にDと等しくなる点が重要で、信用創造のサイクルが完了すると元の預金がすべて準備金として積み立てられます。例:D = 500万円、r = 20% の場合、m = 5、M = 2,500万円、L = 2,000万円、R = 500万円。
実際の貨幣乗数が理論値より小さくなるのはなぜですか?
教科書の式 m = 1 ÷ r は「銀行はすべての超過準備を貸し出す」「一般の人はすべての現金を銀行に預ける」という2つの仮定に基づいています。実際にはどちらも成立しないことが多く、特に日銀がゼロ金利・マイナス金利政策を実施した時期には、銀行が日銀当座預金(超過準備)に多額の資金を滞留させました。また、家計や企業が一定の現金を手元に置くことも信用創造の連鎖を断ち切ります。アベノミクス下の量的・質的緩和でも、銀行の超過準備積み上がりにより理論上の乗数効果は限定的でした。
免責事項
この計算機は入門マクロ経済学のマネーサプライモデルを実装したものです。超過準備の保有、現金漏出、日銀の公開市場操作、信用市場の状況などは考慮していません。実際の信用創造は金融政策・金融機関の貸出姿勢・マクロ経済環境に左右されるため、本計算結果は参考情報としてご利用ください。金融・投資に関する判断は専門家にご相談ください。